2024/11/24 twst フロカリ / 求愛行動続きを読む 最近、ラッコちゃんの様子がおかしい。フロイドはそう思った。 ラッコちゃんとはフロイドがつけた同学年のカリム・アルアジームのあだ名だ。そして、フロイドの想い人でもある。 何かと好きだと言ってくるし、自作したらしいお菓子をくれる。見た目は悪かったけど、味は悪くなかった。 どうしたんだろうと疑問に思うが、好きな相手から好きだと言われることも、多少見た目が悪くても自作だというお菓子をもらうのも嬉しいことに違いはない。 しかし、フロイドにはこんなことをされる覚えはなかった。確かにカリムに対して「好きだ」と伝えれば同じように「オレも好きだぜ!」と応えてくれていたが、カリムから「好きだ」と言われることは今までなかった。 どうせ友人としての好きなのだろう。カリムの好きはいっぱいいて、その中の特別になれたとはフロイドはまだ思っていない。 いずれ特別になるとは考えているが、現状ではただの仲のいい友達としか思われていないはずだ。 だからフロイドはあまり期待せずに、カリムに好きと伝えられたときに、「オレもラッコちゃんのこと好きだよ〜」と軽く返していた。その言葉に、ほんの少し恋情を込めて。 カリムからの好きが、友達としての好きではなく恋愛としての好きへと変わってくれるよう願いを込めながら。 我ながら随分と臆病だと思うし、自分らしくないとも思う。 普段なら自由に言いたいことを言って、やりたいことをやる。だからさっさとカリムに対して想いを告げて、たとえ断られてもさっさと攫ってしまうべきなのだとわかっている。わかっているのだが。 カリムの太陽のように眩しい笑顔を見ると、どんなひどいことも出来なくなる。形も不揃いで少し焦げたクッキーも目の前で食べてしまうし、歯が溶けそうなほど甘すぎる紅茶だって飲み干すことができる。 だからカリムが好きなのだと気づいたのは最近だ。カリムが悲しいと感じるかもしれないことはできないし、したくない。きっとカリムから差し出されたものなら毒だって飲み干してみせるだろう。「それは恋ですよ」 カリムに対し抱く感情が何なのか、己の片割れであるジェイドに相談したらそう教えられた。珍しそうに目を見開いてしげしげと見つめられるのはいい気分じゃなかったから、その時は手を使って乱雑にジェイドの顔を無理やり逸らさせた。 きっとこれも、カリム相手にはできないことだ。 平日の朝、今日もまたカリムはフロイドに好きだと伝えにくるのだろうと、寮から出た。 鏡舎から出るとそこにはカリムがいて、フロイドの姿を見つけると嬉しそうに笑った。それだけで機嫌が良くなり、今日は真面目に授業を受けようという気分になる。「おはよぉ、ラッコちゃん」「ああ、おはよう! フロイド!」 どうせだから一緒に学校に行こうと考えて声をかければ、元気よくカリムも返してくれた。 それから、カリムはフロイドにとって、とんでもないことをした。 ぐわっと大きく口を開いて見せた。それにドキリと心臓が跳ね上がる。ウツボの人魚にとって、口を大きく開いて見せるのは求愛行動だからだ。 咄嗟にフロイドはカリムの口を手のひらで塞いだ。心臓がばくばくと大きく脈打っている。どうして突然そんなことをしたのかはわからないが、迂闊なことはしないでほしい。「ふおいお?」「ラッコちゃん……そーいうの、あんまやっちゃ駄目だよ」 特にジェイドの前では、と心の中で付け足す。 すると、珍しくカリムが不満そうな顔をしながらフロイドの手を掴んで、己の口から離した。「むぅ、これでも伝わらないか」「……は? 伝わらないって、何が?」「ウツボは口を大きく開けるのが求愛行動って聞いたけど、違ったんだな!」 何を伝えたかったのかと問えば、とんでもない返事が返ってきた。 そのまま「うーん」と唸りながら考え出すカリムに、フロイドの頭の中は真っ白になる。 求愛行動、確かに先程カリムがやったのはウツボの求愛行動のそれだ。でも、何故カリムがそんなことをしたのか。 これでも伝わらない、カリムは確かにそう言った。もしかしたら自分は何かとんでもない勘違いをしていないか。「やっぱ言葉で伝えないと駄目だよな! 好きだぜ、フロイド!」 音で表すならキラキラという音が似合いそうな笑顔でカリムが言う。そうしてやっとフロイドは気がついた。今までカリムが己にしてきたことは、好きだと言ったり、手作りのお菓子をくれたりしたのも、全てフロイドへの求愛行動だったのだと。 今日までのカリムとのやり取りが一気に頭の中で再生されて、フロイドは今度は自分の口元を覆い隠した。 そのまま座り込んで俯く。でなければ、顔が赤いのがカリムにバレてしまう。「ふ、フロイド? どうした、具合でも悪いのか!?」 急に座りだしたフロイドを心配してか、カリムが慌てだす。同じようにしゃがみこんでなんとかフロイドの顔を見ようとする。情けない顔をしているに違いない自分の顔を見られたくなかったフロイドは、しゃがみこんだカリムの首元へと顔を埋めた。 カリムの首元から香る、どこか甘い匂いにくらりとしながらぎゅっと彼の体を抱きしめる。「わっ、どうしたんだ、フロイド!」「ラッコちゃんさぁ、ほんと……ほんとさぁ、そういうとこだからね……」「そういうとこ……?」 どういうところだ? などと疑問符を浮かべているであろうカリムに、両思いだったのだと漸く気づいたフロイドは、彼の唇に噛み付くようなキスをしてやるのだった。畳む
最近、ラッコちゃんの様子がおかしい。フロイドはそう思った。
ラッコちゃんとはフロイドがつけた同学年のカリム・アルアジームのあだ名だ。そして、フロイドの想い人でもある。
何かと好きだと言ってくるし、自作したらしいお菓子をくれる。見た目は悪かったけど、味は悪くなかった。
どうしたんだろうと疑問に思うが、好きな相手から好きだと言われることも、多少見た目が悪くても自作だというお菓子をもらうのも嬉しいことに違いはない。
しかし、フロイドにはこんなことをされる覚えはなかった。確かにカリムに対して「好きだ」と伝えれば同じように「オレも好きだぜ!」と応えてくれていたが、カリムから「好きだ」と言われることは今までなかった。
どうせ友人としての好きなのだろう。カリムの好きはいっぱいいて、その中の特別になれたとはフロイドはまだ思っていない。
いずれ特別になるとは考えているが、現状ではただの仲のいい友達としか思われていないはずだ。
だからフロイドはあまり期待せずに、カリムに好きと伝えられたときに、「オレもラッコちゃんのこと好きだよ〜」と軽く返していた。その言葉に、ほんの少し恋情を込めて。
カリムからの好きが、友達としての好きではなく恋愛としての好きへと変わってくれるよう願いを込めながら。
我ながら随分と臆病だと思うし、自分らしくないとも思う。
普段なら自由に言いたいことを言って、やりたいことをやる。だからさっさとカリムに対して想いを告げて、たとえ断られてもさっさと攫ってしまうべきなのだとわかっている。わかっているのだが。
カリムの太陽のように眩しい笑顔を見ると、どんなひどいことも出来なくなる。形も不揃いで少し焦げたクッキーも目の前で食べてしまうし、歯が溶けそうなほど甘すぎる紅茶だって飲み干すことができる。
だからカリムが好きなのだと気づいたのは最近だ。カリムが悲しいと感じるかもしれないことはできないし、したくない。きっとカリムから差し出されたものなら毒だって飲み干してみせるだろう。
「それは恋ですよ」
カリムに対し抱く感情が何なのか、己の片割れであるジェイドに相談したらそう教えられた。珍しそうに目を見開いてしげしげと見つめられるのはいい気分じゃなかったから、その時は手を使って乱雑にジェイドの顔を無理やり逸らさせた。
きっとこれも、カリム相手にはできないことだ。
平日の朝、今日もまたカリムはフロイドに好きだと伝えにくるのだろうと、寮から出た。
鏡舎から出るとそこにはカリムがいて、フロイドの姿を見つけると嬉しそうに笑った。それだけで機嫌が良くなり、今日は真面目に授業を受けようという気分になる。
「おはよぉ、ラッコちゃん」
「ああ、おはよう! フロイド!」
どうせだから一緒に学校に行こうと考えて声をかければ、元気よくカリムも返してくれた。
それから、カリムはフロイドにとって、とんでもないことをした。
ぐわっと大きく口を開いて見せた。それにドキリと心臓が跳ね上がる。ウツボの人魚にとって、口を大きく開いて見せるのは求愛行動だからだ。
咄嗟にフロイドはカリムの口を手のひらで塞いだ。心臓がばくばくと大きく脈打っている。どうして突然そんなことをしたのかはわからないが、迂闊なことはしないでほしい。
「ふおいお?」
「ラッコちゃん……そーいうの、あんまやっちゃ駄目だよ」
特にジェイドの前では、と心の中で付け足す。
すると、珍しくカリムが不満そうな顔をしながらフロイドの手を掴んで、己の口から離した。
「むぅ、これでも伝わらないか」
「……は? 伝わらないって、何が?」
「ウツボは口を大きく開けるのが求愛行動って聞いたけど、違ったんだな!」
何を伝えたかったのかと問えば、とんでもない返事が返ってきた。
そのまま「うーん」と唸りながら考え出すカリムに、フロイドの頭の中は真っ白になる。
求愛行動、確かに先程カリムがやったのはウツボの求愛行動のそれだ。でも、何故カリムがそんなことをしたのか。
これでも伝わらない、カリムは確かにそう言った。もしかしたら自分は何かとんでもない勘違いをしていないか。
「やっぱ言葉で伝えないと駄目だよな! 好きだぜ、フロイド!」
音で表すならキラキラという音が似合いそうな笑顔でカリムが言う。そうしてやっとフロイドは気がついた。今までカリムが己にしてきたことは、好きだと言ったり、手作りのお菓子をくれたりしたのも、全てフロイドへの求愛行動だったのだと。
今日までのカリムとのやり取りが一気に頭の中で再生されて、フロイドは今度は自分の口元を覆い隠した。
そのまま座り込んで俯く。でなければ、顔が赤いのがカリムにバレてしまう。
「ふ、フロイド? どうした、具合でも悪いのか!?」
急に座りだしたフロイドを心配してか、カリムが慌てだす。同じようにしゃがみこんでなんとかフロイドの顔を見ようとする。情けない顔をしているに違いない自分の顔を見られたくなかったフロイドは、しゃがみこんだカリムの首元へと顔を埋めた。
カリムの首元から香る、どこか甘い匂いにくらりとしながらぎゅっと彼の体を抱きしめる。
「わっ、どうしたんだ、フロイド!」
「ラッコちゃんさぁ、ほんと……ほんとさぁ、そういうとこだからね……」
「そういうとこ……?」
どういうところだ? などと疑問符を浮かべているであろうカリムに、両思いだったのだと漸く気づいたフロイドは、彼の唇に噛み付くようなキスをしてやるのだった。畳む